磁気コンパスの自差修正とは?放置リスク・「5度の目安」・自差表の有効期間まで解説
公開日:2026年/記事監修:海事代理士・行政書士吉田法務事務所(日本コンパスアジャスタ協会認定・テクニカルマイスター)
磁気コンパスの示す針路は、船ごとに少しずつ「真の針路」からズレています。このズレを自差と呼びます。自差を放置すると、見た目上の針路と実際の針路に誤差が生じ、座礁・衝突のリスクや船舶検査での指摘につながるおそれがあります。
本記事では、船主・船長・運航管理者の皆様に向けて、自差の仕組みから「5度の目安」「修正のタイミング」「自差表の有効期間」「費用の目安」までをわかりやすく解説します。
1. 磁気コンパスの「自差」とは
磁気コンパスは地球の磁気(磁北)を指す計器ですが、船体を構成する鉄材や搭載された電気機器がつくる磁界の影響を受けるため、コンパスの北が磁北とは異なる方向を指します。この誤差を自差(Deviation)と呼びます。
船体がつくる磁界には、次の2種類があります。
- 硬鉄成分による永久磁気(溶接・厚板などの残留磁気)→ 永久磁石で打ち消します
- 軟鉄成分による誘導磁気(甲板・床材などが地磁気に誘導されて帯びる磁気)→ 軟鉄や高透磁率合金(パーマロイ等)・フリンダースバーで打ち消します
自差は船ごとに異なり、積み荷や船体の経年変化、機器の増設などによって時間とともに変化します。自差が東にずれている場合は「偏東(+)」、西にずれている場合は「偏西(-)」と表し、真の針路は「コンパス方位+自差」で求められます。

2. 自差を放置するとどうなる?4つのリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| ① 針路のズレ | 自差が大きいと、コンパスどおりに舵を切っていても実際の航路がズレます。見張りや海図照合が疎かになると座礁・衝突・遭難につながるおそれがあります。 |
| ② 電子機器故障時の無防備 | ジャイロコンパスやGPS・電源が使えなくなったとき、頼れるのは磁気コンパスだけです。自差が未修正のままでは、いざという時のバックアップが機能しません。 |
| ③ 検査での指摘 | 船舶検査のほか、PSC(寄港国検査)やSIRE等の第三者検査では、自差表の有無・残存自差が確認されます。5度以上の残存自差は検査員によっては指摘対象となります。 |
| ④ 万一の時の保険・責任問題 | 針路誤認が原因の事故と判断された場合、法定備品の管理不良(自差未修正)が保険金支払いやP&I保険への影響を及ぼす可能性があります。 |
「ジャイロがあるから磁気コンパスは予備でいい」とお考えの方も多いのですが、ジャイロ故障時に口を揃えて磁気コンパスの重要性を説く船長は少なくありません。また、ジャイロやオートパイロット使用中も、ときどき磁気コンパスと比較することで電子機器の異常を早期発見できます。
3. 1分でわかる、点検を考えるタイミングのチェックリスト
次の項目に1つでも当てはまる場合は、自差の測定・修正を検討してください。
- ✓コンパスの針路がGPSやジャイロの針路と明らかにズレている気がする
- ✓入渠(ドック)・船体修理から1年以上経過している
- ✓最後の自差修正から1〜2年経過している(自差表の有効期間は2年)
- ✓自差表の写しが見当たらない、または有効期限切れのまま運航している
- ✓新しい電子機器(レーダー・通信機器など)を搭載・移設した
- ✓船舶検査や傭船検査を控えている
4. 修正の目安「5度」と、やるべきタイミング
4-1. 「5度の目安」とは?
修正が必要かどうかは、自差曲線(自差表)の最大誤差で判断します。現場の目安は次のとおりです。
| 残存自差 | 目安 |
|---|---|
| 3度以内 | 大型船ではISO規格に基づき3度以内が求められる場合があります。余裕のある状態。 |
| 5度以内 | 推奨される修正基準。SIRE等の検査では5度以上を指摘される例があります。 |
| 5度〜7度 | 検査の有無にかかわらず早めの修正をご検討ください。 |
| 7度以上 | 業界の一般的な慣行でも修正が必要とされる水準です。 |
4-2. 修正のタイミング(目安)
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 定期点検(1〜2年に1回) | 船体の磁気は経年変化します。年に1回の測定、遅くとも1〜2年に1回の修正が一般的です。 |
| 入渠(ドック)・船体修理後 | ドック作業で船体磁気が変化しやすいため、出渠後の試運転時に修正するのが定石です。 |
| 新造船・大改造後 | 初回修正後、新造船は初期変化が激しいため半年後に再修正するのが望ましいとされます。 |
| 電子機器の搭載・移設後 | レーダー・通信機器など強い磁界をつくる装備の後は、装備完了後に再修正します。 |
| 自差表の有効期限前 | 自差表の有効期間は2年。船舶検査に備えて期限内の更新を。 |
4-3. 自差表が「法定要件」でもある理由
国土交通省の「航海用具の基準を定める告示」では、磁気コンパスは「自差を修正することができるものであること」かつ「残留自差を修正するための図表」(=自差表)を備えたものであることが要件とされています。つまり、自差を測って表にしておくこと自体が法令上の備え付け条件の一部。船内に自差表がない・期限切れという状態は、検査時に問題となり得ます。
5. 自差修正の作業内容と流れ
自差修正は岸壁接岸中には実施できません。海上で船舶を旋回させながら、各方位における船体磁気と地球磁気の影響を測定し、修正を行います。
- 方位測定:海上で船舶を回転させ、8方位のコンパス指度を記録(ジャイロ併設船はジャイロとの差を測定)
- 誤差の分析:測定地点の偏差(地磁気偏角)を加除して自差を算出し、自差曲線を作成
- 調整:修正磁石・フリンダースバー等を調整し、船体磁界を打ち消す
- 再測定・確認:修正後の残存自差を再確認
- 自差表の作成・交付:残存自差を記した自差表を船内に掲示できる形で交付
製作・修正方法によって所要時間は異なりますが、当事務所では一般的な船舶でおおむね1〜2時間で完了します。
6. 当事務所の自差修正サービス
海事代理士・行政書士吉田法務事務所は、一般社団法人 日本コンパスアジャスタ協会(JCAA)認定・西日本支部所属のテクニカルマイスターが在籍。タンカー・旅客船・貨物船・フェリーなどの大型船から、クルーザーなどの小型船まで、国内外製を問わず多くの磁気コンパスを修正してきた実績があります。
自差測定・自差表作成
8/16方位の精密測定と自差曲線の分析。
検査提出用の自差表を交付(有効期間2年)。
磁気コンパス調整
修正磁石・フリンダースバーの調整と再測定。
残存自差の最小化を徹底します。
液補充・メンテナンス
コンパス液の補充、気泡除去、動作確認。
メンテナンスのみのお申し込みも歓迎です。
出張サービス
九州一円・沖縄県の港や係留地へ出張対応。
佐賀・福岡・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄。
作業の流れ
お問い合わせ・ヒアリング
お電話またはメールで、船種・大きさ・作業希望日・係留場所をお伺いします。
無料お見積り
料金・作業日程を事前に明確にご提示します。追加料金の心配はありません。
現地作業
係留地または指定港で、測定・調整・メンテナンスを実施(所要1〜2時間)。
自差表のお渡し
作成した自差表をお渡しし、管理のポイントもご説明します。
費用の目安
自差修正の料金は、船舶の大きさ・種類・作業場所によって異なります。当事務所では事前に無料のお見積りを提示しますので、まずはお気軽にご相談ください。
7. よくある質問(FAQ)
ご相談・お見積りは無料です
「針路がズレている気がする」「自差表の期限が切れている」「入渠明けの確認をしたい」——
どんな些細なことでも、まずはお問い合わせください。
0942-81-0609
電話応対時間:平日 9:00〜17:00
サービス詳細ページを見る
対応エリア:九州一円・沖縄県(佐賀・福岡・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)
〒841-0204 佐賀県三養基郡基山町宮浦486番地176 / TEL 0942-81-0609(平日9:00〜17:00)
業務:船舶コンパス自差修正・調整/小型船舶操縦免許更新・失効再交付講習/各種行政手続き・経営支援
- 国土交通省『航海用具の基準を定める告示』(https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201704/00006696.pdf)— 磁気コンパスの要件・残留自差を修正するための図表
- 一般社団法人 日本コンパスアジャスタ協会(JCAA)「自差修正の重要性」(https://www.jcaa.jp/concept.html)— SOLAS・船舶設備規程による法定備品要件、硬鉄・軟鉄の修正原理
- 船学「5度以上の誤差を生じれば、修正が必要です」(https://fune-gaku.com/practical/navigation/post-6339/)— 5度・7度の目安、毎年1回の測定推奨、修正手順・所要時間の実例
※本記事の内容は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。法令・規格・検査基準は改正されることがありますので、最新の規定は各所管官庁・検査機関にご確認ください。